ゲームの無理な話

ゲームに関する話題をまとめていきます。ゲームのシステムについての話や、ストーリーがあるものについてはその中身も扱う予定です。

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バトルゲームがアイドルゲームになった〜なんでもゲームにすればよいのか?〜

メディアミックス展開の横暴?

ラノベスマホゲーム「スクールガールストライカーズ」(略称:スクスト)。少女たちが時空の平和を揺るがす敵に立ち向かう物語と多彩な変身アイテムを駆使したバトルを組み合わせたゲームである。先日、スクストから派生した新作アプリ「トゥインクルメロディーズ」(略称:スクメロ)がリリースされることが発表され、話題になっている。

 

 

www.jp.square-enix.com

 

app.famitsu.com

 

 

設定上は問題ないが……

スクストには多次元時空の設定があるため、登場人物たちがアイドルである時空が存在すること自体は問題がない。これまでも、アイドルの姿に変身できる変身アイテムは登場していた。また、ミニゲームとして簡単なリズムゲームがあった。その上、アイドルを志しているという設定のキャラクターもいた。しかし、本格的なアイドルゲームに参入することについては、首を傾げざるを得ない(手のひら返しの準備はできている)。


ここでは、スクメロへの懸念と期待することを書いていきたい。最後に、すべての音楽ゲーム化に共通することとして、下記に記す内容をまとめる。

 

 

スクメロへのギモン

毛色が違う

これまでのスクストは、シリアスとコメディのギャップをウリにしていたという感がある。かたや登場人物の出生に秘められた謎が明らかになり、かたや留学生のキャラクターが日本の文化についてあらぬ誤解をしてトラブルになる。シリアスなパートでは考察が捗り、コメディのパートでは面白かった内容がネットで話題になったりする。スクストが面白いのは、相対する内容に関するギャップがあるからであって、シリアスだけ、コメディだけ、では魅力が半減する。時空をめぐる戦いありきで設定が練られているキャラクターもいるため、キャラクターの魅力が減ってしまわないかも不安である。

 

ジャンルが違う

音楽ゲームは、ノベル風RPGであるスクストとはジャンルが違う。そのため、既存ユーザーの需要を満たせるかどうかは不透明だ。もちろん、前述の通り、登場人物がアイドルになることには、特に違和感はない。むしろ、イベントの一つの流れとしてであれば、十分受け入れられるだろう。ただ、アイドルゲームをメインでやっていくことには、ファンとして一抹の不安がある。


実は、これまでもシューティングゲームや釣りゲームがミニゲームとして実装されてきた。ただし、それは報酬を伴わないミニゲームとしてであって、苦手であっても影響はなかった。一方、報酬を伴うゲームであるアイドルゲームは、音楽ゲームのテクニックがなければ報酬も満足感も得られない。たしかに、スクストの親愛度システムやキャラクターの人気投票はアイドルゲームに通ずるところがある。だが、アイドルゲームは女の子が好きなだけではやっていけない。


いわば、これまで様々なジャンルのゲームをつまみ食いしてきた彼らに、アイドルゲームの道を極めさせることができるのかが問題となる。願わくば、音楽ゲーム・アイドルゲームが得意な新規層を取り込み、スピンオフ元であるスクストにも手をつけてもらいたいところだが、そちらの方がスクストが好きな人にアプローチするよりはるかに難しいだろう。果たしてスクメロは、スクストとアイドルゲーム、双方のプレイヤーの需要を満たすことができるのだろうか?

 

スクストほど手軽ではない

音楽ゲームはスクストと手数が違う。スクストはいわゆるポチポチゲーなのだが、ポチポチしなくていいよう、工夫が凝らされている。例えば、長押しすることで連打扱いにしてくれたり、最近ではスタミナを注ぎ込むことでキャラクターが自動的に冒険してくれるミニゲームもあったりする。できるだけ暇な時間に遊べるようになっているゲームだ。


一方、音楽ゲームは、多いものでは1回のプレイで700−800程度の連打を求めてくる。曲をプレイするため、1プレイ3分程度の拘束は免れない。もちろん、スクストでもいろいろなことをすれば時間がかかるのだが、音楽ゲームはちょっとした空き時間にやりたい内容ではないはずだ。移動時間や休憩時間にイヤホンなし(無音)でプレイする猛者もいるようだが、普通の人にはそのような離れ業はできまい。

 

スクメロへの期待

以上のようなことが懸念事項として挙げられる。一方で、アイドルゲームをリリースすることに関しては、ある程度は評価することができる。「文句を言うな」とまで言ってしまうと狂信者になってしまうが、脈絡もメリットもない悪いこと、というわけではないと思う。

 

コンテンツへのコミットメントの増加

たしかに音楽ゲームはプレイするタイミングが限られてくるが、逆に言えば、まとまった時間をとってプレイしてもらうことが可能だ。プレイ画面にはCGダンスが映されるようで、スクスト同様、コスチュームの変更も可能らしい。スクスト以上に視覚に訴えかけるコンテンツになるだろう。


また、スクストの主役だったアルタイル・トルテ以外のキャラソンが発売されることも考えられ、推しチーム・推しストライカーへの投資手段が増える。そういう意味でも、もっと多くコンテンツに触れてもらえるようになるのではないだろうか? 2.5次元展開にも期待したいところだが、如何せん新チーム「アプリコット・レグルス」以外は芸歴の長い声優が多く、スケジュールを押さえるのが大変そうだ。2人組・3人組などの派生チームを作るなど、工夫が求められる。いずれにせよ、コンテンツに張り付いてもらえるのが、アイドルゲーム化のメリットといえよう。

 

ポチポチからの脱却

単純なPay-To-Winから抜け出す意味でも、音楽ゲームという手段は重要だ。従来のスクストは、レアアイテムを多く持っている人ほどイベントで上位に入り、更なるレアアイテムを手に入れられるようになっている。バトルコマンドの入力の必要がない上、リリースから月日が過ぎて強いアイテムが多く出てきた。そのため、どれだけたくさんガチャを回し、回復アイテムを買えるか「だけ」が勝利の鍵となってしまっている。


こうした現状から、一旦ゲームをリセットしたくなるのは自然な考えだ。つまり、ユーザーの腕が試される要素を加えて、完全なPay-To-Winから抜け出すことは、改革の一手として適当である。


特に、音楽ゲームは課金アイテムを使ってゲームを「クリアしたことにする」のが難しい。課金アイテムを使って0になったライフを回復することはできるが、お金を払って「クリアしたことにする」オプションがあるというのはあまり聞かない。しかし、音楽ゲームが上手ければ、持っているアイテムが弱くても、Winの可能性がある。微課金でもランキングで上位を狙えるのが、音楽ゲームの魅力だ。(もちろん、廃課金の音ゲー上級者と微課金の音ゲー上級者では、前者の方がランキングが高くなる可能性が高い。)

 

アイドル設定だからこそのエグさ

スクメロに期待するのは、スクストの時空に対するギャップである。たしかに、シリアスがあったからこそ魅力があるキャラクターもいる。だが、戦士とアイドルという真逆の設定があることで、スクストでは辛い思いをしているキャラクターがスクメロではアイドルとして輝いているという、ある種の「エグさ」が生じる。


先日亡くなった小林麻央さんの言葉に絡めるとすれば、シリアスな境遇にあることだけがその子のアイデンティティではない。そうしたキャラクターがキラキラしているという違和感を通じて、さらにキャラクター愛を深めることができるのではないだろうか?

 

音楽ゲーム化全般に言えること

なんでも音楽ゲームにすればよいというものではない。RPGにしろ、恋愛ゲームにしろ、スピンオフ元と雰囲気や対象層、プレイに必要な環境などが変わってしまう恐れがある。新機軸を作るのであればパズルでもなんでもよいわけで、音楽ゲームにこだわる必要はない。一方で、音楽ゲームは音楽のリリースやイベントをすることができるため、2.5次元ブームに乗るにはもってこいだ。Pay-To-Winに偏重し過ぎて新規客の入会が難しくなったゲームをリセットすることにもつながり、重課金をする人だけが極端に強いという状態を防ぐことができる。ただし、コンテンツによって合う合わないがあるので、馬鹿の一つ覚え的に音楽ゲーム化することには賛成しない。


IPとしてのスクストの健闘を祈る。

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