突然(※)の終了宣言
この世には良いゲームと悪いゲームの2種類しかない。この二元論に当てはめるとすれば、「プリティーリズムシェイク(プリシェイ)」は悪いゲームだったのだろう。
カードはほとんどがテレビのキャプチャ画像や版権絵の流用*1。セリフの収録はほとんどなし。音楽ゲームのタップ音には爽快感を感じない。プリティーリズムの音楽がプレイできるという利点を考慮しても、決して良いゲームとは言えなかった。
そのゲームが5月31日をもってサービスを終了した……
……ことが7月18日になってやっと発表された。ファンは植物状態にあったプリシェイを1ヶ月半見守ってきたが、今になってようやく死亡が宣言される形となった。本来であれば、ユーザーが課金したであろうコンテンツの終了を事前告知なしで行うというのは許されざる行為で、それを事後に報告するなどもってのほかだ。
NEWS|プリティーリズム CD・DVD公式WEBサイト(2017/7/22閲覧)
にもかかわらず、ファンの多くは怒っていない。むしろ、このゲームが生まれたことに感謝している人もいる。
どのようなゲームだったのか
そもそも、プリティーリズムシェイクは、公式とすら思われていなかった。まず、プリティーリズムシリーズ放送終了後の2015年1月頃、プリティーリズムシェイクという謎のコンテンツが準備されていることが判明する。当初は、アニメ公式などでの宣伝がなかったことから、著作権を無視したゲームもしくは同人作品であると考えられていた。だが、紛れもない公式作品であった。
ゲームは3列に配置され上から下に流れてくるアイコンを、音楽に合わせてタイミングよく叩くというシンプルなものである。体力を残した状態で最後まで曲をプレイできればクリアだ。キャラクターのスキルはランダムで発動し、ゲージを溜めて「プリズムライブ」(必殺技を撃てる状態にする)と「プリズムジャンプ」(必殺技)を発動する。
スライド
一般的なゲームと違う点は、「スライド」があることとキャラクターカードの属性が7つあること、「マスコット」がいることだ。
今でこそ、長押ししたままレーンを移動するという譜面はよくあるものになっているが、当時はあまり見なかった。ノート(リズムゲームで流れるアイコン)の始点が水平方向へのスライド(いきなり一瞬で列を移動する)になるとか、指2本を同時に平行移動するというものもあり、難易度は高かった。その他のノートに関しては、単発のタップとロングノートで構成されているシンプルなものであった。
7つの属性
属性が7つもあるというのは、原作のアーケードゲームの設定をそのまま持ち込んだためだ。そのカードの本来の属性の他に、ランダムで2つの属性がつけられている。曲側にも3つまで属性が設定されていて*2、それに合わせて3人のユニットを組む必要があった。そのため、進化・強化用アイテムも7種類あり、集めるのが大変だった。
ちなみに、カードの進化の仕方も特徴的だ。普通のゲームでは、1回進化すれば再び進化することはできない。だが、プリシェイの場合は、確率で再び進化可能な状態に進化することができる。運が良ければ、最低レアのカードを段階的に最高レアに上げることもできる。
マスコット
「マスコット」は妖精のこと。決められたマスコットをカードのパートナーにすることで、カードを強化することができた。マスコットがパートナーになっていて、そのレベルが最大でなければ、カードを進化させることはできない*3。カードのレアリティより上のマスコットをパートナーにすることはできないが、下のマスコットはパートナーにできる。
マスコットにも3つの属性が設定されているので、強くしたいならカードに合わせる必要がある。マスコットもコインガチャで引くことになるので、3属性全部揃ったものが引けるのは稀だ。
どのような問題があったのか
不安定な挙動
冒頭に示した以外にも問題はある。中でも致命的なものを挙げていきたい。まず、残念ながら、重かったりバグがあったりで満足なプレイができなかった。プレイ後にフリーズして結果発表の画面が出ない現象は筆者も何回か経験している。その他にも、ログイン時に頻繁に読み込みエラーが起こるなど、挙動が安定していなかった。
競合コンテンツに見劣りするUI
それから、お世辞にも画面のデザインがユーザーの意欲を掻き立てたとは言い難い。色使いや画面の配置がダサいだけなら許されるかもしれないが、見辛い部分があったことに関しては擁護のしようがない。
「プリズムライブ」発動時、画面が虹色に光り、ノート(特にフェミニン属性の黄色のもの)が視認困難になる。スキル発動時もカードイラストの割り込みがあり*4、割り込んだ分、譜面がカーブする。言っていることがよくわからないかもしれないが、動画サイトなどの映像資料を参照してほしい。
いずれにせよ、音楽ゲームを作っている方は、スキル発動演出やボーナスタイム突入時などに譜面に侵食しないよう、ご注意願いたい。難しい譜面ができないのはユーザーの責任だが、譜面が見辛くてノートを落とすのはクリエイターの責任だ。
それでも支持されたワケ
プリティーリズムの楽曲がプレイできる
それでも、プリシェイは有り難がられた。生前、プリティーリズムの楽曲がプレイできるのは、プリシェイと全国のPrismStoneプリパラショップに残されたプリティーリズム筐体だけだった。プリティーリズム筐体でのプレイはプリズムストーン(宝石型のアイテム)が必要で、ハードルが高いことから、プリシェイが支持されたのだろう。
残念ながら版権の都合上、一部の楽曲は実装できなかったが、それでもほとんどの楽曲をプレイできるというのは大きかった。ちなみに、日替わりで劇伴もプレイできた。
ところで、ライバルの「アイカツ!」は「アイカツスターズ!」筐体に侵食してきている。設定の全く違う「プリティーリズム」にチャンスはあるのだろうか*5?
公式への数少ない貢ぎ先
『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の公開当時、映画を観る以外で公式に貢ぐ手段は少なかった。そんな中で、プリシェイが支持されていた。実は映画の公開から1ヶ月が経った2016年2月時点でイベントや新規カードなどの更新はストップしており、お通夜ムードだった。しかし、イベントの復刻や新規カード(既存の版権絵)など、公式が動く場面もあった。
これは、キンプリや女の子のプリリズ*6に投資したいというファンの熱い想いがあってこそのことであり、どんなコンテンツでもスマホゲームさえ残しておけば瀕死の状態から復活できるというわけではない。現に、プリシェイは死んだ。
新規供給が殆どない状況で愛されたプリシェイは奇跡としか言いようがない。基本的に、何も供給しないゲームが生きる道はない。
叩かれなかった運営
上記のような理由でプリシェイは感謝され、その終了を叩かれることはなかった。それだけプリティーリズムというコンテンツがありがたかったのだろう。サービス終了を笑って許し、また惜しんでくれるファンがいることはとてもよいことだ。
ただし、突然のサービス終了については褒められたことではない。有償ジェムの未使用残高がある場合は、取り返せる可能性があるようなので、交渉の余地はあると思う。その点においては、同調圧力に負けてはいけない。消費者が主張できる権利である。
「プリシェイ」から「キンシェイ」へ
ところで、現在、新しいアプリゲーム「KING OF PRISM プリズムラッシュ! LIVE」が新規登録を受け付けている。このゲームの公式的な略称は定かではないが、すでに「キンシェイ」「キンプリシェイ」呼ばわりされているようだ。プリシェイが浮かばれるためにも、キンシェイに女の子が出てくることを期待したい。
*1:『プリティーリズム・レインボーライブ』のライバルユニット・ベルローズが温泉旅館で卓球をしている絵や、彩瀬なると蓮城寺べるのクリスマスコスなど、一部で書き下ろしはあった。だが、7割は既存絵の流用だった。
*2:同じ曲の属性・譜面違いもある。
*3:カードの進化の条件は、カードレベルMAX、マスコットレベルMAX、親愛度MAX、所定の数の進化アイテムとコインであった。
*4:スキル発動時、アニメ内のユニットで組んでいると、さらに特殊な演出がある。
*5:プリパラでは、プリリズ時代のコーデを色違いやデザイン変更で実装していた。また、劇場版の北条コスモとそらみドレッシングはプリズムショーをし、セインツ(プリリズの歴代主人公)はプリパラライブをやっている。そういう意味では、プリパラの方が先取りしているとも言える。だが、アイカツスターズは筐体に過去のキャラクターとステージを実装している。シリーズ5周年とはいえ、かなりの数のキャラクターを実装しており、単なるコラボに終わらなさそうだ。
*6:キンプリに投資すると、女の子ではなく男の子のグッズが増やされてしまうという危惧は一部にあったようだ。テレビアニメBlu-ray Boxの発売記念イベントなどを経て、現在は女の子のグッズも増えてきている。