おいしい楽曲を食べるために
「アイドルマスター シンデレラガールズ」の楽曲が大手音楽配信サイトで配信され、話題になっている。
これは、アプリゲーム「スターライトステージ」(デレステ)の3周年を記念した企画のようだ。
CDが発売されていない曲や、発表したばかりの新曲も配信された。
これはスーパーの試食コーナーより画期的である。
えっ? どういうこと?
それは追い追い説明する。
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音楽アプリゲームはCDの販促
スマホ用音楽ゲームは、新曲を遊べることを目玉にしているものが多い。
デレステでも、1ヶ月に1-2曲、未発表曲が追加される。
毎月のように、未発表曲を目玉にしたイベントが開かれている。
限定カードなどをゲットするには、楽曲を十数回プレイする必要があり、ユーザーは自然と楽曲を覚える。
一方で、ゲームでの実装からCDの発売までに1年近くかかる場合もある。
正直なところ、ゲームの体験がCDの購入につながるかは微妙だった。
試聴から購入までの時間を短縮
今回、日本コロムビアは直近の「クレイジークレイジー」を含むイベント曲を、主要音楽配信サイトで配信した。
これにより、楽曲を聴いてから購入するまでの時間が短くなった。
カップリング曲は配信されないが、それでも十分画期的といえよう。
スマホ用の音楽ゲームは、楽曲のプロモーションも兼ねている。
しかし、デレステではCDの発売に1年かかる場合もあった。
今回、デジタル配信したことによって、楽曲を聴いてから短い時間で買えるようになった。
ゲームは試食コーナー
最新楽曲を配信したことの意味を考えてみよう。
例えば、スーパーでウィンナーの試食コーナーがある。
試食をしておいしいと思ったら、あなたはそれを買う。
デパートやスーパーの典型的な販売戦略だ。
これはデレステのようなゲームも同じである。
ゲーム内で試聴させて、消費者の意欲をかきたてる。
今回、ゲーム内にもリンクが貼られていて、気に入った楽曲をすぐ購入できるようになった*1。
食指を動かす音楽の匂い
パン屋さんからおいしそうな匂いがすると、消費者はパンを買いたくなる。
匂いが消費者の心を動かすのだ。
スーパーでコロッケなり焼き芋なりのテーマソングが流れるのも、消費者の心を動かしているのかもしれない。
同様に、音楽ゲームをプレイしたら、音楽が欲しくなる。
そこに楽曲購入ボタンがあれば、すぐ買いに行けて、すぐ聴ける。
音楽ゲームはスーパーの試食コーナーと同様に、試聴させることで消費者の購買意欲を高める。
人は匂いに誘われてパンが欲しくなる。音楽ゲームをプレイしたら、音楽が欲しくなる。
最高においしい曲を届けられるか?
公式側に求められているのは、最高においしい音楽の提供だ。
どんなにおいしいウィンナーも、何度も食べるとおいしいと感じづらくなる。
発売に1年かかるCDというのは、1年間試食し続けているようなもので、おいしい状態とはいえない。
それから、どんなにおいしそうなパンの匂いも、時間が経つと忘れてしまう。
パンが食べたいなと思わせてから、実際にパンが買えるまでの時間が長ければ、匂いの効果は薄れる。
できるだけ早い発売を
楽曲を試聴したときの感動を再現するためにも、できるだけ早い配信が求められている。
そういう意味では、今回のクレイジークレイジーの配信は最高においしかった。
試食してすぐ実食に移れるというのは、スーパーより優れている。
発表から発売までに時間がかかると、消費者は最高のコンディションで曲を楽しむことができない。
発表後、できるだけ早く発売すべきだ。
今後の課題:全曲の配信
今回配信されたのは、一部の楽曲にすぎない。
配信派のユーザーはソロ曲を含む全曲の配信を望んでいる。
デレステのソロ曲は発売済みの楽曲が多いとはいえ、プレイして初めて聴く人もいる。
そういう人にフル尺の曲に触れてもらうためにも、ソロ曲を配信したほうがよい。
記事の執筆時点で、今回の配信楽曲がiTunes Storeのアニメランキングの上位を独占している。
今回の配信は3周年記念のキャンペーンとのことだが、今後の継続的な配信を期待する。
*1:購入ボタンはLIVE画面の楽曲詳細と、ルームのサウンドブースにある。