なぜホップはプレイヤーをほめちぎるのか?
「ポケットモンスターソード・シールド(ポケモン剣盾)」の登場人物「ホップ」が話題になっている。
主人公の幼馴染で、初めての対戦の相手となる。
彼は、主人公をほめるセリフが多いことで注目された。
ホップはどうしてプレイヤーをほめちぎるのか?
チュートリアル:初心者向けゲームシステム講座
ゲーム界隈では、初心者に仕組みを教えるお試しステージを「チュートリアル」と呼ぶ。
ホップとの対戦もチュートリアルの一環だ。
対戦を通じて、レベルアップやタイプの相性を学ぶ。
ゲームの途中まではホップが仕組みを教えながら、ホップの指示通りに進む。
初心者でも、スムーズにゲームを進められる。
同シリーズを遊んできたプレイヤーは、一部の説明をスキップできるという点も親切であった。
複雑化するゲームの機能
ゲームが進化していく過程で、さまざまな機能が追加された。
その結果、機能を覚えるのが大変になってきている。
機能に対するわかりやすい説明が求められている。
例えば、ポケモンで言えば、メガシンカ・Zわざやダイマックスといった機能が増えた。
それらをユーザーが説明なしで理解するのは難しい。
わざを選択すればよかった初期作とは違う。
プレイしてもらうのが目的
ゲーム会社の願いはゲームをプレイしてもらうこと。
主人公をほめちぎるキャラは、チュートリアルにふさわしい。
主人公を批判したり、見下したりするキャラはチュートリアルに向いていない。
プレイヤーを不快な気分にさせたら、ゲームを遊んでもらえなくなる。
チュートリアルのテクニック
ひとつずつステップアップ
チュートリアルではひとつのミッションをクリアするごとに、できることが増えていく。
どうして一気に教えないのか?
一気に教えられると、機能を覚えられない。
そのため、ちゃんとしたゲームではひとつずつしか機能を説明しない。
機能を覚えさせるための簡単なステージを作っているゲームもある。
慣れてきた頃に新しい機能を解禁する。
- まずは、敵に攻撃してみよう。
- 次は、必殺技を撃とう。
- それから、回復をしてみよう。
というようにステップアップしていけば、機能を覚えやすい。
その度に「上手だね」とほめてくれて、ユーザーは達成感を得ながら成長する。
アイテムをタダでくれる気前のよさ
チュートリアルにおいては、懐の深さも重要だ。
スマホゲームでよくあるのが、進化やガチャをさせてからチュートリアルを終わるというメソッドである。
そこまでやってあげないと、プレイヤーが機能を知らないままプレイを続けてしまう。
あるいは、困難を感じてゲームをやめてしまう。
試供品を提供し、プレイヤーに使い方やよさを知ってもらう必要がある。
例えば、チュートリアルでもらったカードは、チュートリアルで獲得したアイテムや、タダで進化できることが多い。
機能を紹介しつつ、当面の目的(アイテム集め)も示せるので、とても有用だ。
ゲームの進化で機能が複雑化。
プレイを継続させるため、プレイヤーを得意にさせる必要がある。
ひとつずつステップアップしながら、その都度ほめる。
機能を使ってもらうため、アイテムをタダで配る。
ほめるメソッドの限界
バカにされていると感じる問題
とはいえ、ほめるメソッドは万能ではない。
中には、「ほめられてもうれしくない」「バカにされていると感じる」人もいる。
ディープなゲームファンの一部も、そうした考えを持っている。
彼らに達成感を味わわせる方法を考える必要がある。
ほめられたい人とほめられたくない人で、テキストを別にするのも可能だとは思う。
また、ノルマや採点制度など客観的な指標を設定するゲームもある。
ほめる以外でプレイヤーを離脱させない仕組みを作れば、ほめられたくない人も取り込めるだろう。
ほめるばかり……ゆとり仕様?
チュートリアルキャラが全て教えてくれて、アイテムをタダでくれる。
そうした至れり尽くせりの状況を、「ゆとり仕様」と批判する人がいる。
ヒントなしで勝たなければならない状況。
それはゲームを遊べる人が減るので、好ましくない。
ところで、望ましくない行動に対して、警告や制止をするゲームもある。
例えば、通ってほしくない場所に行こうとすると、「そっちは行けないよ」とキャラクターが呼び止める。
貴重なアイテムを売ろうとすると、「二度と手に入らないかも」という注意文が出る。
それは行動へのフィードバックであって、罵倒や叱責とは違う。
ユーザーが安全にゲームをプレイするのに必要なのだ*1。
ゲームが高機能化する中で、プレイヤーを導くのはメーカー・プレイヤー双方にとって重要になっている。
*1:できることを制限しておかないと、想定から外れたことが起きて、ゲームが進まなくなる可能性がある。(条件が満たせなくなり、ゲームの進行に必要なアイテムが手に入らないなど。)