ゲームの無理な話

ゲームに関する話題をまとめていきます。ゲームのシステムについての話や、ストーリーがあるものについてはその中身も扱う予定です。

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無料10連ガチャの衝撃と喪失感

もてあそばれるユーザーの心理

あるスマホゲームがアニバーサリーキャンペーンとして、本来は回すのにアイテムが必要なガチャを1日1回、アイテムを使わずに回せるという空恐ろしいキャンペーンを実施した(現在は終わっている)。


1回に10個のアイテムが手に入るというガチャで、倍率は普段と変わらなかったため、一見するとかなりの大盤振る舞いである。この機会に、強いアイテムを手に入れた人も多いことだろう。


しかし、これは「無料で強いアイテムが手に入ってよかったね」で終わる話ではない。その後が地獄なのだ。


ガチャを無料で引けなくなった人は喪失感を覚え、異様に(有償アイテムで)ガチャを引きたくなる。やがて、1日1回の課金では耐えられなくなり、ガチャ依存症になる可能性も否定できない。

 

もちろん、世の中、悪いガチャばかりではない。この記事では、ガチャのあるべき姿について考えたい。

 

 

 

ガチャの規制について

ここで、ガチャに関するきまりを整理したい。

 

コンプリートガチャ

2種類以上の特定のアイテムを引くことで特別なアイテムが手に入るガチャは禁止されている。この方式をカード合わせ*1とか、コンプリートガチャ(コンプガチャ)と呼ぶ。


コンプガチャの問題は、子どもなどが当選率を誤認する可能性にある。消費者庁のページでは、サイコロの目が例として挙げられている*2。サイコロを振って全ての目をそろえる場合、1つの目が出るたびに、新しい目は出にくくなる。例えば、一度6の目が出たら、それ以降は6の目は全部はずれになる。新しい目が出るたびに、はずれがどんどん増えていき、別の目が当たりづらくなっていく。


それが理解できない人は、50個の中から3個をそろえるときに、1個が引けたら他の2個も同じように引けると思い込んでしまう。その錯覚を利用することで、その人が誤解していなかった場合よりも多くの額を課金させるというのが、コンプガチャの魔力である。こうしたコンプガチャは原則的に禁止されている。

 

ガチャの内容表示

ガチャの提供内容と確率は正確に表示することが求められている。これは法的な規制ではなく、業界団体による自主規制だ。というのも、現状、ガチャの提供割合が表示されていなくても、いずれの法律にも違反しない。デパートの福引に各賞がいくつ入っているか表示しないのと同じだ。

 

(業界団体による規制の内容はこちら)

CESA | 一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会


ただし、法律に違反しなくても、たくさんのクレームがあれば、運営会社にとっては痛手となる。消費者の判断は法律による機械的なものではなく、倫理的な価値基準によるものであることを忘れてはならない。


(今回の無料キャンペーンも、法律に触れてはいない。でも、ガチャ依存症になってしまう人が出てくるとすれば、倫理的にどうかと思う。)

 

さまざまなガチャ

射幸心を過剰に煽ることを避けつつ、ガチャを引かせるという手段はいろいろある。

 

ボックスガチャ

排出されるアイテムの総数が最初から決まっているガチャをボックスガチャと呼ぶ。30個のアイテムが入っている場合、30個全て引き終わればボックスはリセットされるか、再び回すことができない。だが、30回ガチャを引けば、目当てのアイテムは確実に手に入る。


ボックスガチャの難点としては、復刻のうまみがないことが挙げられる。通常のガチャであれば、復刻すると、限定アイテムが欲しかった人が回してくれる。しかし、ボックスガチャのアイテムは、頑張れば確実に手に入るため、復刻してもあまりうまみがない。


ボックスガチャのアイテム(例えば、カードゲームのレアカード)が複数欲しい人は課金して回してくれるので、そのような需要が見込めるゲームには向いているかもしれない。

 

天井付きガチャ

ボックスガチャとは違うが、通常のガチャで、一定回数ガチャを回すとレアリティの高いアイテム(または、希望するアイテム)が確実にもらえるものがある。このように、過剰な課金を防ぐ仕組みは、「天井」と呼ばれている*3


ただし、一定回数ガチャを回すにも数万円かかる場合があり、必ずしも得策とはいえない。ガチャの天井が期間限定の場合は*4、1週間〜1月に数万円を注ぎ込むことになりかねない。

 

有償の確定ガチャ

レアリティの高いカードを確実に手に入れられるガチャがある。最高レアが確定という場合もあるが、有償の可能性が高い。この種類のガチャは、ユーザーに確実に金を落とさせることができる。ただし、限定性を意識させる必要がある。


「期間限定の月見バーガーがいつでも食べられたらいいのに」と言う客がいたとしても、本当にいつでも買ってくれるとは限らない。いつでも買える状態にすると、売り上げを伸ばすことは難しいだろう。期間限定だからこそ、「今食べなきゃ」と思ってもらえるのだ。


期間に加えて、1人1回限り(10連)という制限を設ければ、さらにお得感が増す。この制限を設ける目的は、ユーザーに「お得なキャンペーン期間にだけ回せばいいや」と思わせないためだ。普段課金しない人に課金してもらうためのキャンペーンなのに、普段課金する人がいなくなっては、意味がない。

 

チケット方式のガチャ

あるゲームでは、報酬として、ガチャを引けるチケットを配っている。基本的には1回だけだが、10回引けるものも存在する。1回しか引けない場合でも、一定のレアリティ以上のものしか出ないケースがある。


アイテムで回すものと違い、1回しか引けないため、過剰に射幸心を煽られることはないだろう。その代わりに、回復アイテムのために課金する人が出てくるので、タダでガチャを回されて商売あがったりというわけではない。


別のあるゲームでは、コインを集めると、チケットに交換できる。1日1回ガチャを回すと少しのコインがもらえるため、よほど欲しいアイテムがない限り、1日1回だけガチャを回せばよいことになっている。一方で、チケットでは引けない限定ガチャを設けることもある。そうすることで、ガチャを引きたい欲望と課金のバランスをとっている。


このように、多種多様なガチャを用いて、射幸心を過度に刺激せずに収入を得られる仕組みがより多く考案されていくことを願う。

 

正攻法で信頼を

商売である以上、課金してもらう必要があるが、そのためにユーザーの心理や誤解を悪用することはフェアではない。例えば、ボックスガチャや天井付きというのは、あるアイテムが絶対に欲しいユーザーの心理を正しく利用しているように思える。しかし、絶対に欲しいユーザーから金を巻き上げるために、当たりづらくするというのは悪用である。


そうではなくて、正攻法でガチャを回したいと思わせることが必要だ。例えば、「このアイテムは強い」「このアイテムの絵柄はかわいい」などと思ってもらえる景品を用意することが求められる。

 

家庭で手軽にガチャを引く

最近では、家庭用のガチャガチャのおもちゃもある。好きなものをカプセルに詰められるので、紙を中に入れて夕ご飯を決めたり、買い出し当番を決めることも可能だ。こうしたおもちゃを使うことで、子どもにガチャがどういう仕組みなのかを教えたり、大人がスマホゲームのガチャを引きたい衝動を抑えることもできるのではないだろうか?

 

*1:もともとは子ども向けの商品などについてくるカードに関する問題だった。

インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A|消費者庁

*2:インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A|消費者庁

*3:逆に言えば、天井まで課金すると、強いアイテムは確実に手に入る。

*4:ガチャの中には、期間限定ガチャと恒常ガチャ(期間限定アイテムが出てこないガチャ)がある。

期間限定ガチャで独自に天井が設定されている場合は、その期間を過ぎると天井までのメーターがリセットされ、0からのスタートとなる。メーターが恒常と共有の場合は、期限がなく、ガチャを引いていればいつか天井が来る。

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