ソシャゲマネーで獣電戦隊キョウリュウジャーの新作が作られる
今回起こったことを端的に説明すると、表題の通りである。
「ブレイブフロンティア2」という新作アプリゲームの宣伝のために、なぜか2013年の『獣電戦隊キョウリュウジャー』の新作映像が作られた。
コラボってなんだっけ?
アプリゲームのコラボというと、既存の人気IP(知的財産)や、売り出したいIPとコラボすることが多い。
「ゲーム内で」コラボ相手を説明したり、コラボ相手を絡めたストーリーを展開したりする。
場合によっては、テレビCMでコラボを告知する。
だが、今回はこのような形となった。
ゲームをほぼ無視して新作ドラマを丸々1本作るとは、前代未聞である。
コラボってなんだっけ?
獣電戦隊キョウリュウジャーとは
機械化した古代生物「獣電竜」とともに、悪に立ち向かった強き竜の者*1たちのこと。
現在テレビで大活躍中の竜星涼さんがレッドを務め、飯豊まりえさんがバイオレット*2を演じた。
- 10人を超える大所帯であること、
- 変身時にサンバを踊り、ロボの合体中もサンバが流れること、
- テロップがひらがなであるなど、子ども向け要素が強いこと
が今作の特徴だ。
キャッチフレーズは「史上最強のブレイブ」。
この「ブレイブ」は戦士のエネルギーという意味でも、破天荒という意味でも使われる。
変身時の掛け声は「ブレイブ・イン! キョウリュウチェンジ、ファイヤー!」。
変身アイテムにブレイブを込めて変身する。
個別の名乗りも「牙の勇者、キョウリュウレッド!」のような感じである。
キョウリュウジャーを知らない方には、ブレイブな作品ということだけ覚えてもらえればよいと思う。
ブレイブフロンティア2との関係は?
キョウリュウジャーとブレイブフロンティア2に関係はない。
単なるブレイブつながりとしか思えない。
キョウリュウジャーと同じ2013年にリリースされたブレイブフロンティア(無印)。
新作を出すにあたり、プレイヤーに再結集してもらうべく、キョウリュウジャーにも再結集してもらったとのことだった*3。
スーパー戦隊の新番組が始まったこのタイミングで旧作の新エピソードを出すとは、ブレイブにも程がある。
具体的に何が作られたのか
怪人がコラボの意味不明さに言及するCM
1つ目は、意味不明なコラボにありがちなCMだ。
敵幹部の2人が、キョウリュウジャーがブレイブフロンティア2の宣伝をするといううわさ話をしている。
ここで「ブレイブつながりかしら」と言っているので、ブレイブつながりなのだろう。
「その通りだ」と新造の怪人が現れるが、彼は一体何者なのだろうか?
その答えは、今回の新作ムービーで明かされる。
ちなみに、このCMで使われているBGMは、キョウリュウジャーのテレビ本編で使われた劇伴である。
キャストがブレフロのキャラに扮するWebムービー
2つ目の動画では、竜星涼さんら、キョウリュウジャーのメインキャスト6人が「ブレイブフロンティア2」のキャラクターに扮する。
「勇敢戦隊ブレイブフロンティア」と称して、6人が架空のヒーローに変身し、悪に立ち向かう4分程度の作品だ。
ヒーローものによくある描写ばかりを集めたパロディ動画であり、キョウリュウジャーを知らなくても十分楽しめる。
ここまでは、一般的に許容されうるCMであろう。
問題は次の新作ムービーだ。
幻の33.5話が新しく作られる
今回作られたのは、「キョウリュウジャーの5年後」ではなく、2013年の劇中に挿入される話である。
敵は人間の感情を集めて、ボスを復活させようとしている。
33.5話ではキョウリュウジャーのことが大好きな怪人を作り出した。
理想の方法で倒されることで、キョウリュウジャーファンの喜びの感情を集めようという作戦だ。
キョウリュウジャーを研究し尽くした最強の怪人に、キョウリュウジャーは勝てるのだろうか?
スーツの中の人以外の主なスタッフ・キャストはほとんど当時のままということで、かなりクオリティの高い33.5話になっている。
劇中に出てくる「ブレイブポイント」という言葉が、ゲームを紹介する特設サイトでも使われているのは微妙にムカつく。
キョウリュウジャーを見た後は、ブレイブフロンティア2のブレイブポイントを知ろう!
リリース発表会にも出演
ちなみに、キョウリュウジャーの6人はブレイブフロンティア2のリリース発表会にも出演し、ヒーローショーまで行なった。
この発表会には、竜星涼さんら6人のキャストも出演している。
ここまでコラボ先を立たせるなんて、ブレイブフロンティアのスタッフは自分を宣伝する気があるのだろうか?
ソシャゲの課金で推しの新作が作られる?
今回のコラボによって、ソシャゲに課金すれば、推しの新作が作られるのではないかと思っている方も多いかもしれない。
予算とスケジュールがネック
でも、アニメにしても、特撮にしても、テレビシリーズに比べて制作費が高くなる可能性が高い。
今回も、今や日本を代表する若手俳優である竜星涼さんのギャラは高かったに違いない。
役者が人気になっている作品はスケジュールを押さえるのが難しいため、難しいもののあるのではないだろうか?
ユーザーの想いはなかなか通じない
そしてなにより、今回の新作ドラマはユーザーが望んだのではなく、ゲーム会社側の提案である。
プロデューサーの熱意が通じて、33.5話を作ることになったという*4。
つまり、ユーザーが「◯◯とコラボしてください」と言っても、簡単には通じない。
まず、今回の前例ができたことで、「ウチでも新作ドラマを作ってもらおう」と追従する企業が出てくるかどうかが鍵になる。
もちろん、ユーザーの声も大事だ。
ユーザーアンケートなどで「コラボしてほしい作品はありますか?」と聞かれたら、真っ先に書こう。
もしかしたら、抽象的に書いた方が運営の耳に届くかもしれない。
広告業界はユーザーの具体的なニーズに答えない。
宣伝効果があるか分からない
人気ドラマの新作を作っても、宣伝になるのか分からない。
だから、ドラマを作ることでお金を払ってくれる人がいることを証明しなければならない。
ユーザーにできるのは、コラボを希望する作品とそのゲームの両方が好きな人がいることを、ネット上で示すことではないだろうか?
一部のユーザーが、英霊を扱うアプリゲームと英雄を扱う特撮ドラマのコラボを望んでいるようだが、特撮ドラマ側に話題性がなければ、コラボは実現しないだろう。
コラボ期待しての課金は自己責任で
繰り返しになるが、今回のコラボはゲーム会社の熱意の結果であり、ユーザーが望んだものではない。
コラボを期待して特定のゲームにお金をつぎ込んだとしても、コラボするとは限らない。
それに、コラボは手段であって目的ではないので、誤解をしないようにしてほしい。
コラボを期待して課金するのは自由だが、それが失敗に終わってもあなた自身の責任になることをお忘れなく。