ストアで販売 発売後もアップデート
2019年11月、AppleのApp Storeに障害が発生し、人気ゲームが遊べなくなっている。
今、ゲーム業界に何が起こっているのか?
障害とメンテナンスの経緯
今起こっている現象を手短に説明する。
アプリストアにアップデート版を配信できず、メンテナンスを終了できないという状況だ。
そもそも、アプリの更新には内部データの更新と、アプリの書き換えがある。
大きな不具合の修正・仕様の大幅な変更・新機能の追加となると、アプリ本体の書き換えが必要である。
データの更新はできていても、アプリ本体が書き換わっていない。
そういう理由で、メンテナンスを終了できないのだ。
入り口の統一・コンテンツの肥大化
今、ゲームが置かれている状況を簡単な言葉で表すとすれば、
- 入り口の統一
- コンテンツの肥大化
であろう。
アプリストア、あるいはゲームストアで買うのが一般的になっている。
その影響で、メーカーの自由が制限されている。
ゲーム装置や記録メディアの発達で、内容がどんどん大きくなっている。
発売後も増え続けるゲームの内容が、ユーザーにとって不便な側面も生み出している。
メーカー自身の負担にもなっている。
統一されたストアにてゲームを販売することで、利便性が向上した。
その反面、自由なゲーム製作が難しくなっている。
ゲームのサイズが大きくなり、発売後も開発され続ける。
楽しみが増える一方で、プレイヤー・メーカー双方に不便な側面がある。
ゲームはどう変わったのか?
アプリストア・ゲームストアで購入
ゲームソフトといえば、ゲーム屋さんや量販店で買うものだった。
個別のウェブサイトから購入(ダウンロード)する場合もあった。
しかし、今は統一されたアプリストアや、ゲーム専用のオンラインストアでも売られている。
プレイヤーは量販店やインターネットを探さなくても、ゲームを購入できる。
また、個人の開発者でもゲームを売りやすくなった。
ゲーム機・記録メディアの進化
科学技術の発達は、ゲーム機に進化をもたらした。
現在のゲーム機は、ゲーム黎明期と比べ物にならないほど、綺麗な映像や音を出せる。
声優の声を収録し、全編フルボイスを実現したゲームもある。
ゲームカセットの容量も増え、むしろカセットがいらないゲーム機もある。
ダウンロードして、記録メディアに保存すればよい。
それができるのも、記録メディアの大容量化と、低価格化のおかげであろう。
アップデート:発売後もデータが更新
ファミコン時代には考えられなかったことだが、発売後も開発は続けられる。
昔、ローソンのLoppyでソフトを更新できるサービスもあった。
今はインターネットを通じて、家にいながら更新版をダウンロードできる。
不具合の修正だけでなく、キャラクターやステージの追加もある。
そうすることで、発売後もプレイヤーの関心を保っている。
発売=完成ではないのが今のゲーム業界である。
ユーザーが受ける不利益
古い機種は遊べない アップデート必須化
スマホゲームでは、自分のスマホが対応機種から外れてしまう場合がある。
システムをアップデートしていく中で、古い機種では耐えられない・使えない仕様になる。
あるいは、新しいシステムが出てきた。
そうした中で、古いシステムに対応しきれなくなるということが考えられる。
昔のゲームはPS2さえ持っていれば、誰でも遊べた(PS2専用ゲームの場合)。
そういう意味では、今のスマホゲームは複雑になっている*1。
メンテナンス:遊べない時間の発生
最近のゲームはオンラインのものも多い。
特にスマホゲームで人気の作品は、完全にオンラインのものばかりだ。
オンラインゲームは、オフラインゲームと違い、メンテナンスが発生する。
その間、ユーザーはゲームを遊べない。
メンテナンスは、平日の日中に行われる場合がほとんどだ。
一方で、今回のように夜まで伸びるケースもある。
遊べない時間は、大ボリュームのゲームの代償といえるかもしれない。
開発・運営の限界
ストアの都合に合わせる必要性
統一されたストアには不便な側面もある。
各ストアの基準やシステムに合わせたり、審査を受けたりする必要がある。
発売日や価格など融通が利かない部分もある。
2019年10月の増税の際は、直前にストアの価格基準*2が変更され、運営会社が対応に追われた。
中には、課金アイテムの販売量を変更すると発表していたゲームもあった。
急きょ予定を取り消し、販売量ではなく価格を変えていた。
ストアの基準に合わせて、表現方法を変えるゲームもある。
法令遵守にもつながるが、表現には一定の制約が生じている。
開発現場の疲弊
発売後も更新があるというのは、言い換えれば、終わりが見えないということでもある。
スタッフが疲れ果て、不具合やストーリーの矛盾につながっている。
「運営は無能だ」
「運営が悪徳商法をしている」
と吹聴する人もいるが、多くは「現場に余裕がない」ものと考えられる。
例えば、「意図しない仕様だったため、修正しました」というお知らせがよくある。
これについて、「思ったより強かったから規制したんだ」と思う人もいるかもしれない。
でも、チェック機能が働かず、意図しないものが本当に実装されるケースもあるようだ。
(少なくとも、プロデューサー1人でゲームを作っているわけではない。)
人気が下火でも ゲームは複雑化
プレイヤーは同じソフトを遊び続けるわけではない。
どんなに有名なコンテンツでも、いつかは人気が下火になる。
しかしながら、ゲームが続く限り、より強く・より複雑な仕組みを作らなければならない。
人手が減っても、開発はどんどん難しくなっていく。
オンラインゲームならではの、難しい問題である。
クラウドゲーム化で変わるのか?
クラウドゲームというものも出始めている。
これはアプリ本体をダウンロードせずに、オンラインでプレイするというもの。
一見便利そうだが、やはり万能ではない。
オンラインに変わりはないし、元となるプログラムも存在する。
システムが変わらない限り、プレイヤーは振り回され続けるだろう。